CATL社は長安汽車との戦略的パートナーシップ提携締結をアナウンスしました。CATL社の提携戦略は下流から上流、さらにはその先までを俯瞰したアプローチとなっており、これまでもそうですが、今後もこうした話が出てくると思われます。 (CATL宁德时代, 2020) 一方の長安汽車も2020年半ばを過ぎ、好調さが際立っています。同社が先日発表した8月のグループ全体の新車販売台数(速報値)は、前年同月比35.62%増の169,415台となっており、ここしばらく続く顕著な成長率となっています。 (长安汽车, 2020) 現在、中国の自動車市場は合資、地場、外資が入り乱れていますが、生き残りをかけての競争が加速しています。勝ち残るための一つのキーとなるのが、現在進行形で発展しているスマートシティーとどれだけシンクロさせることができるかにあると考えられます。 EVは単なる電池を使った車ではなく、電動化という枠組みで他の電気制御システムと統合してくことで、センサー等を駆使したモビリティー化が推進され、アドバンテージが高まっていくことが考えられます。 References CATL宁德时代. (2020). 宁德时代与长安汽车签署战略合作协议 长安汽车. (2020). 产销数据
2020年4月に公開されたCATL社の財務諸表によると2019年度の同社の売り上げは約457億人民元でした。2017年の約200億人民元、2018年の約296億人民元という数字を見ても同社がかなりのペースで売り上げを増加させていることが分かります。 (CATL, 2020) 同社の強みについては、使い古された表現をあえて使うと、卓越した技術力、コスト競争力、巧みなアライアンス戦略等があげられます。直近でもメルセデスベンツ社との次世代バッテリー技術の共同開発や、エネルギー貯蔵とリチウム電池の分野でシュナイダーエレクトリック社との協業も報じられており、過去に遡る類似の話は数え上げるときりがないレベルになってきています。財務方面も8月に新株の発行(私募 )を行っており、197億人民元の調達に成功しています。 同社が何を見て全力で疾走しているのかは自動車業界の行く末を語る上で一つのキーになります。1社への供給だけに偏らない勇敢な戦略は有力なスタートアップ企業の真骨頂とも言える在り方でもありますが、背景には確固たるビジョンが存在しており、壮大な枠組みの中で動いていることが見えてきます。このあたりの分析は10月に講演させて頂くセミナーに含めたいと思いますし、現在、執筆のご依頼も頂いているのでそちらの方にも詳しく書かせて頂きたいと思います。 References CATL. (2020). 宁德时代新能源科技股份有限公司 2019 年年度报告
TikTokが新たな米中対立の火種となりそうな状況下で中国の理想汽车が米国でIPOに成功しました。また小鹏汽车も近くIPOする見込みです。すでに一足早く米国でIPOを行った蔚来(NIO)社を含めた三社が現在中国NEVメーカーで主要な新勢力として捉えられています。また威马社も米国でIPOを目指しているのではと考えられています。政治リスクがある中でも経済活性化、雇用拡大を狙う米国州が中国企業を支援する構図も出てくると考えられます。 (威马汽车) 中国のNEV市場は減速が指摘されている中、工业和信息化部が直近で出した統計によると7月のNEVの中国での販売台数は2020年に入って初めて前年同期比でプラス成長になっています。Tesla社の中国での販売台数は7月は前月比で落ち込んだと報じられた一方で、上海工場が稼働して以降、全体として見ても中国ビジネスは好調と言えます。外国企業が入ることでコストも含めた技術的な競争が激化し、結果として中国EV市場の成長に繋がっていくことが期待されます。 また先述の蔚来(NIO)社がCATL社と協力してバッテリーのリース事業を始めると発表がありました。現在の私たちの生活レベルで考えると電池は百円ショップでも売られているようにすでにコモディティ化していると言えます。車載バッテリーも安全性や航続距離を向上させるために技術的な改良がされていますが、常にコスト面でのプレッシャーがかかります。すでにBaaS (Battery as a service)という言葉も出ていますが、蔚来(NIO)社のアプローチはバッテリーの脱中心化を促し、より多くの企業が参入できる市場を形成する可能性を秘めています。バッテリーのリサイクル・リユース市場も呼応してくるテーマです。 なお沖為工作室ではサイエンス&テクノロジー社主催で「車載用リチウムイオン電池のリサイクル技術動向と産業各社の取り組み事例」と題したセミナーで講演予定です。電気自動車の需要増加に伴い注目を集める車載用リチウムイオン電池のリサイクル・リユース技術ですが、使用済み電池をどのように活用・再生するのか、リサイクルの要素技術から、産業各社の取り組み事例、さらには中国における最新の動向・市場分析についてこのセミナーでは取り扱います。沖為工作室合同会社は第4部で講演予定です。 【セミナー概要(予定)】 日時 2020年10月14日(水) 10:30~16:30 会場 東京・品川区大井町 きゅりあん 5F 第2講習室 サイエンス&テクノロジー社セミナーご案内ページ☟ https://www.science-t.com/seminar/B201094.html References 威马汽车. (2020) 威马汽车官网-智能汽车头号实力派. Retrieved from http://www.wm-motor.com/www.wm-motor.com これまで車載バッテリーに関して、NMCやNCAは正極材としてニッケルの特性を生かし、容量を高めることが取り組まれてきました。一方でNMCとNCAにはC (コバルト)が含まれていますが、これは高価で希少な金属であり、一般に電気化学的性能に不可欠であるとされています。現在、コバルトフリーバッテリーであるNMAに関する開発、研究が活発化していますが、この領域は課題が複雑に絡み合います。 一つは性能面で量産に耐えうるレート特性を維持するためにNi、Mn、Alの3元素の含有量の調整や補助技術(表面被覆、添加剤等)の確立です。二つ目は希少価値とされるコバルトが無くなると、リサイクル・リユースに関わるプレイヤーの動機付けが弱まる懸念があります。リサイクルに関わる技術が進められる一方で、回収に関わるコストを転嫁できるスキームを構築しないと参入プレイヤーの育成ができません。 (Li-Cycle, 2020) またコバルトはコンゴでの劣悪な労働環境で児童を含む労働者から採掘されていることが指摘されており、コンゴ産のコバルトが意図せず使用されてきた可能性もある市場が単にコバルトフリーに移行するだけでは道義的な責任を問われるリスクもあります。 電気自動車の需要増加に伴い注目を集める車載用リチウムイオン電池ですが、課題はまだ多くあります。沖為工作室合同会社はサイエンス&テクノロジー社主催セミナー「車載用リチウムイオン電池のリサイクル技術動向と産業各社の取り組み事例」の第4部で講演する予定になっています。中国の車載バッテリーのおける最新のリサイクル、リユース動向について発表する予定です。 【セミナー概要(予定)】 日時 2020年10月14日(水) 10:30~16:30 会場 東京・品川区大井町 きゅりあん 5F 第2講習室 サイエンス&テクノロジー社セミナーご案内ページ☟ https://www.science-t.com/seminar/B201094.html References Li-Cycle. (2020). Lithium-ion Battery Recycling - Advanced Resource Recovery: Li-Cycle®. Retrieved August 06, 2020, from https://li-cycle.com/ サイエンス&テクノロジー社主催で「車載用リチウムイオン電池のリサイクル技術動向と産業各社の取り組み事例」と題したセミナーで講演することが決まりましたのでご報告申し上げます。電気自動車の需要増加に伴い注目を集める車載用リチウムイオン電池のリサイクル・リユース技術ですが、使用済み電池をどのように活用・再生するのか、リサイクルの要素技術から、産業各社の取り組み事例、さらには中国における最新の動向・市場分析についてこのセミナーでは取り扱います。沖為工作室合同会社は第4部で講演予定です。 【セミナー概要(予定)】 日時 2020年10月14日(水) 10:30~16:30 会場 東京・品川区大井町 きゅりあん 5F 第2講習室 サイエンス&テクノロジー社セミナーご案内ページ☟ https://www.science-t.com/seminar/B201094.html 上記は予定です。詳細はサイエンス&テクノロジー社殿ホームページをご参照下さい。
弊社講演では中国の車載バッテリーのおける最新のリサイクル、リユース動向について発表いたします。 【沖為工作室パートのプログラム】 1.中国におけるEVトレンド 1.1 中国EV市場アップデート 1.2 中国LiBサプライヤーアップデート 1.3 新型コロナウイルス(COVID-19)のインパクト 1.4 テスラ社が中国EV市場に与えるインパクト 2.中国における車載LiBリサイクル、リユース動向 2.1 車載LiBリサイクル、リユースに関わる法規制 2.2 各社の取り組み 2.3 ユーザーの意識 2.4 リサイクル、リユーススキーム分析 2.5 ボトルネック分析 3.市場規模分析 3.1 中国EV市場 3.2 中国車載LiB市場 3.3 中国車載LiBリサイクル、リユース市場 3.4 競争環境分析(LiBリサイクル、リユース市場) 3.5 CATL社戦略分析 4.結論 4.1 中国車載LiBリサイクル、リユース市場とSDGs 4.2 スマートシティーの一要素としての中国EV 中国における新エネルギー車(NEV)の販売台数は昨年の補助金削減以降、ペースが落ちてきています。直近で中国工业和信息化部が発表した6月のNEV販売台数も前年比で大きく数を減らしています。新型コロナウイルス(COVID-19)の再燃リスクも排除できず、経済の成長率にもマイナスの影響を与えることが想定されます。 (中国工业和信息化部, 2020) 車載用リチウムイオン電池はコバルトフリーバッテリーやミリオン・マイルバッテリーがトレンドとして浮上してきていますが、リサイクルに対する取り組みも新エネルギー車産業の持続可能な開発と低炭素社会の構築のため、強化しなければならないテーマです。2019年11月7日に、工业和信息化部は、「新能源汽车动力蓄电池回收服务网点建设和运营指南」を出し、リサイクルスキームの構築を急ごうとしています。 (中国工业和信息化部, 2020) 現在弊社宛に講演のご依頼を賜っており、この中国の車載バッテリーリサイクルについて発表をする予定です。詳細が決まりましたらまたご案内申し上げます。 References 工业和信息化部. (2020, July 10 ). 2020年6月汽车工业经济运行情况 工业和信息化部. (2019, November 7 ). 新能源汽车动力蓄电池回收服务网点建设和运营指南公告 中国の2020年5月の新車の販売台数は、前年同期比で言うと14.5%増となりました。地方政府の支援策等の効果が出たと考えられています。一方で新エネルギー車(NEV)を取り上げると、前年同期比で23.5%減となっており、2019年7月に補助金削減の影響でそれまでの継続成長から前年同期比減となって以降、失速感が否めないのが現状です。 (中国工业和信息化部, 2020) このような状況の中、中国EVメーカーにおいて、脱コバルトの動きが見え始めています。中国SVOLT社(蜂巢能源)がコバルトフリーバッテリーについて発表したのは以前、取り上げましたが、CATL社もコバルトフリーバッテリーの開発をしており、テスラ社と搭載に向けて協議していると見られています。 中国の乗用車用EVバッテリーはニッケル、コバルト、マンガンで構成する「三元系」と呼ぶタイプが主流でしたが、コバルトはその多くの生産が政情が不安定なコンゴ民主共和国でなされており、価格の高騰リスクがあります。またコバルトは危険な労働環境下での児童労働が常態化している問題もあり、大局的に取り組んでいかなければならない課題でもあります。 中国EV市場は巨大マーケットとしてのポテンシャルがある一方で政策面に大きく依存して成長してきたことが顕著になってきています。中国バッテリーメーカーはコストダウンに取り組む一方で、海外、特に欧州市場に販路を見出そうとしています。すでに建設が開始しているドイツThuringiaのCATL社工場は2022年までに完成予定となっています。 (Hayes, 2019) References Hayes, M. (2019, October 21). German plant for Chinese battery maker. Retrieved June 14, 2020, from https://www.khl.com/construction-europe/german-plant-for-chinese-battery-maker/140743.article
工业和信息化部. (2020, June 11 ). 2020年5月汽车工业经济运行情况 中国が5月12日にアナウンスした輸入79品目の追加関税除外についてですが、除外リストにはレアアースや医療用消毒剤などが含まれますが、台湾トレンドフォース社はその中に含まれるUVランプに注目しています。特にUV-C製品は殺菌用途で需要が高まっており、供給量不足も指摘されているのは同社発行調査レポートのプレスリリースでもご報告させて頂いた通りです。 この追加関税除外については様々な見方があります。米国経済は2020年の第二四半期に新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込むと見られています。一方で同時期に中国は回復期に入ることが予想されています。沖為工作室ではこの第二四半期において米国と中国の経済規模が最も肉薄すると予想しています。 ロックダウン解除された武漢市では地元の自動車メーカーから電気自動車を購入すると1万元(約$1,400)を補助する意向をショートメッセージで市民に伝えたと報じられています。電気自動車以外にもエアコン等の家電にも補助が出る見込みです。追加関税除外は譲歩と見る一方で、すでに回復期に入った中国経済の余裕とも受け取れることができます。 (湖北日报网, 2020) References 湖北日报网, 1. (2020, May). 武汉市防指提醒:最高一次性补贴10000元. Retrieved May 17, 2020, from http://news.cnhubei.com/content/2020-05/17/content_13051944.html
アメリカ合衆国経済分析局は直近で2020年第一四半期(1月~3月)の実質GDPは4.8パーセント減になると速報値を出しています。名目GDPは第1四半期は3.5%減の21兆5400億ドル(年間換算:Seasonally adjusted at annual rates)と発表しています (Bureau of Economic Analysis, 2020)。今後さらに悪化していくという見方がありますが、消費に関するアンケート調査では米国の消費者は新型コロナウイルスで支出を抑えることを計画する一方で、自国の経済先行きについてはヨーロッパ等と比較すると楽観的という興味深い調査結果が出ています。また中国、インド、ナイジェリア、インドネシアにおいては、より多くの世帯が支出の増加を計画しており、より楽観的です(Jones ,2020)。 (McKinsey, 2020) テスラ社はアラメダ郡と揉めた末に米国フリーモント工場を強引に再開させました。中国ではモデル3の販売が好調です。直近のテスラ社の資料によると上海工場は現時点で年間20万台の生産能力を想定していますが、中国の2019年の年間NEVの販売台数は約120万台とされているので、現状の生産能力でフル稼働が可能であれば、中国市場の約2割弱のシェア相当を生産できます。 (Tesla, 2020) 現実的にテスラ社のトータル生産台数は四半期ベースで10万台を超えてきており、経営陣としても自社工場を効率的に稼働させることを想定し、上図のように生産能力を整えてきています。 早期経済再開の危険性について議論もされており注視していく必要はありますが、米国経済の行く末に関わる一つの決断がされたと言えます。 ※米国の名目GDPはSeasonally adjusted at annual ratesであることを明記。(2020.05.15) References Bureau of Economic Analysis. (2020, April 29). Gross Domestic Product. Retrieved from https://www.bea.gov/data/gdp/gross-domestic-product Jones, K. (2020, April 22). How COVID-19 Consumer Spending is Impacting Industries. Retrieved May 14, 2020, from https://www.visualcapitalist.com/consumer-spending-impacting-industries/ McKinsey. (2020). Optimism about country's economic recovery after COVID-19. Tesla. (2020, April 2). Q1 2020 Update. Retrieved from https://ir.tesla.com/investor-relations |
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