2021年6月9日と10日にオンラインで開催されたMDC 2021 (マイクロバイオームデータコングレス2021)において、Second Genome社はマイクロバイオームの研究・開発プラットフォーム用途として、独自のビッグデータ解析ソフトウェアであるOdessaのデモを行いました。Odessaは、同社がすでに展開しているsg-4sightプラットフォームの一部であり、次世代シーケンス(NGS)のデータセットを、より効率的に管理することを目的としています。次世代シーケンスで取れる大量のデータを処理し、分析を行い、免疫腫瘍学などの複数の治療分野やバイオマーカーの同定の効率化が期待されます。 (Second Genome, 2021) 近年、マイクロバイオームに関する研究は加速しており、多くのことが分かってきた一方、各々の研究結果は完全に一致してはおらず、マイクロバイオームの多様性を完全に理解することが困難であるのが現状です。こうした課題に取り組む一つの方法として、多様で広範なデータセットをソフトウェアやAI、クラウド技術等の先端デジタル技術で乗り越えようとすることが目指されています。例えば、品質管理機能、データ処理、分析・機械学習ツールが充実していくことで、共同研究者にとっての作業効率性が高まるとともに、よりクオリティの高い微生物ゲノミクスデータベースが構築できます。 またヘルスケア全般のトレンドとして、バイオインフォマティクス、人工知能アルゴリズムを組み合わせたデジタルアプリを消費者にインストールしてもらい、継続的に消費者の健康管理を行い、アドバイスを行うサービスが広まっています。例えばマイクロバイオームでも同様のサービスが始まっており、こうしたデジタルアプリを通じ、消費者の新鮮なデータを取り、かつ消費者が知りたい健康に関するアドバイスを適切に提供するスキームはニーズがあるとともに、当該市場のドライバー因子になると考えられます。 References Second Genome. (2021). MICROBIOME DRUG DISCOVERY & DEVELOPMENT PLATFORM
弊社沖為工作室合同会社は2021年5月28日、新社会システム総合研究所主催セミナー「スキンマイクロバイオームのグローバル市場トレンド」で講演を行いました。腸内細菌叢が消化や免疫において重要な役割を果たしていることは消費者でも認知されてきていますが、近年、皮膚にも多数の細菌が存在していることや皮膚の健康と細菌の生態系、関係性についての議論も盛んになってきています。マイクロバイオームは、細菌、真菌、ウイルス、その他の微生物が体内や皮膚に生息するミニエコシステムであり、 研究によると、皮膚の1平方センチメートルあたり100万から10億の微生物が生息しているとされます。スキンマイクロバイオームは、VogueやHarper’s Bazaarなどの雑誌でも取り上げられるようになり、スキンケアのトレンドになりつつあります。 講演ではスタートアップ企業の取り組みをはじめ、実際に弊社で購入したスキンマイクロバイオーム製品についてもご紹介させて頂きました。COVID-19の時代には、ソーシャルディスタンスが当たり前となる一方で、非接触型の社会を形成するためにデジタル化がさらに加速しました。コトラーらが提唱するマーケティング5.0はこれまで新興技術として捉えられてきたAI、NLP、センサー、ロボット工学、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、IoT、およびブロックチェーン等をツールとして戦略的に用いることが前提となっています。マイクロバイオームに関するデータが大量に取れるようになった一方で、これらの氾濫するデータ群を研究者間で効果的に情報共有化することが課題になっており、情報管理ツールを有効活用できる企業に大きなアドバンテージがあると考えています。
講演では多くの方にご聴講賜り、深く御礼申し上げます。 【沖為工作室合同会社について】 「人々が働き、生活するためのフェアな場所を作る」という、ミッションのために2020年に設立された会社です。SDGsでもGoal 10に挙がっている「人や国の不平等をなくそう」について力を入れています。今回の講演でもSDGsからの視点も踏まえ発表させて頂きました。弊社では主に将来、実用化が期待される先端技術のトレンドを提供しますが、それは手段であり、あくまで目的は「人々が働き、生活するためのフェアな場所を作る」ことにあります。引き続き応援していただけますと幸いです。 現在、微生物叢を調節できる主な方法は3つあります。その内の二つはすでに市場にも浸透しているプレバイオティクス、プロバイオティクス(あるいは両方組み合わせる場合はシンバイオティクス)です。三つ目のポストバイオティクスは近年新しく議論されるようになった定義であり、統一的な定義がまだ確立されていません。一つの考え方としてポストバイオティクスには、微生物の代謝活動によって放出または生成される物質が含まれ、直接的または間接的に宿主(ヒト)に有益な効果を持つものと捉えられます。ポストバイオティクスは微生物の代謝活動によって放出または生成される物質となりますので、生きた微生物は含みません。そのためプロバイオティクスとは明確に区別されます。また腸内細菌は食物繊維などのプレバイオティクスを変性、発酵して短鎖脂肪酸等を産生しますが、この関係性において、プレバイオティクスを代謝して産生されるものがポストバイオティクスとなります。 (The Institute for Functional Medicine, 2021) 例えばダノン社のアプローチはプレバイオティクス混合物(ガラクトオリゴ糖/フルクトオリゴ糖)とポストバイオティクスを組み合わせます。同社のInfant Milk Formula (IMF)では、特許発酵プロセスで産生される3‘-ガラクトシルラクトース(3’-GL)をポストバイオティクスとして用います。この3’-GLはヒトの母乳に含まれる3’-GL HMOと同一の構造を持っています。こうしたプロバイオティクス、プレバイオティクス、(シンバイオティクス)にポストバイオティクスを加えた統合的な免疫機能構築スキームが近年のトレンドとなっています。 References The Institute for Functional Medicine. (2021). Prebiotic Foods for Postbiotic Abundance. Retrieved from https://www.ifm.org/news-insights/prebiotic-foods-postbiotic-abundance/
PR TIMESでもプレスリリースを公開いたしました。セミナー当日はコロナ下にも関わらず、ご参加賜った多数のご聴講者様に、改めて深謝申し上げます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000055998.html また弊社が調査発行した市場調査分析レポート「マイクロバイオームマーケットトレンド-2021版」も絶賛発売中です。 Kellogg社とUnilever社は2021年3月11〜12日に開催されるバーチャルイベントFuture Food-Tech内でスタートアップ企業から健康をサポートする新しいフードテックのアイデアを募っています。その中でもKellogg社は腸健康のための新しいマイクロバイオームベースのイノベーションを期待しています。(アイディア提出の締め切りは2021年2月5日) (Future Food-Tech, 2021) マイクロバイオームに関する研究は新しい発見が継続して確認されており、食品に対するアプローチも多様化しています。また治療薬や食品だけでなく、スキンケア、農畜水産業等、様々な分野で関連製品が投入され、アプリケーション開発も継続しています。健康に対する関心は近年さらに高まっており、この市場の拡大が期待されます。 References Future Food-Tech. (2021). Innovation Challenge 2021. Retrieved from https://futurefoodtechsf.com/innovation-challenge-2021/ マイクロバイオーム市場調査分析レポートについて☟
https://www.chong-wei.com/microbiome_market_trend.html 中国に拠点を置く研究者チームがマイクロバイオーム検索エンジンの改良版について、米国のMSystems誌に発表しています。マイクロバイオーム検索エンジン2(MSE 2)と名付けられた微生物叢データベースプラットフォームはデータのアクセシビリティと再利用性を確保するために開発されており、データベース、検索エンジン、Webベースのインターフェースが主な特徴となっています。特にマイクロバイオームの研究では既存の微生物叢のインプットが重要であり、新しい微生物叢とどのように関連付けていくかがキーとなります。 (Jing et al., 2020) マイクロバイオームに関するデータが大量に取れるようになった一方で、これらの氾濫するデータ群を効果的に情報共有化することが課題になっています。データドリブン型のスキームから、よりオープンな参加型のデータマネジメントシステムの構築が有効と考えられます。 References Jing, G., Liu, L., Wang, Z., Zhang, Y., Qian, L., Gao, C., . . . Su, X. (2021). Microbiome Search Engine 2: A Platform for Taxonomic and Functional Search of Global Microbiomes on the Whole-Microbiome Level. MSystems, 6(1). doi:10.1128/msystems.00943-20
Evelo Biosciences社は経口カプセル剤EDP1815のアトピー性皮膚炎を対象としたフェーズ1b臨床試験においてポジティブな結果が示されたことを発表しました。EDP1815はPrevotellahisticolaの菌株を使用しており、アトピー性皮膚炎の他、新型コロナウイルス、乾癬も対象疾患としており、臨床試験が行われています。Prevotellahisticolaは比較的新しい菌株であり、炎症性疾患に効果があるとする結果が研究で示唆されています。 今回の発表は昨年発表された中間報告を補完する内容でEDP1815とプラセボを投与された患者間の56日目の違いを変化率で測定した結果、各々の指標でEDP1815を投与された方がプラセボよりも大きな改善が見られたことが示されています。 (Evelo Biosciences, 2021) References Evelo Biosciences. (2021). Evelo Biosciences Reports New Positive Confirmatory Data from Phase 1b Trial of EDP1815 in Atopic Dermatitis. Retrieved from https://ir.evelobio.com/news-releases/news-release-details/evelo-biosciences-reports-new-positive-confirmatory-data-phase 市場調査分析レポート「マイクロバイオームマーケットトレンド-2021版」絶賛発売中です。マイクロバイオーム市場関連企業の取り組みから技術動向、シーケンシング、食品、スキンケア、農畜水産業等への応用、規制、国別市場規模まで扱っています。キャンペーンは3月31日まで。https://www.chong-wei.com/microbiome_market_trend.html
2008年以降、欧米地域を中心に、マイクロバイオームに関する政府の資金調達が活発化し、プロジェクトの数が大幅に増加しました。 米国ではAmerican Human Microbiome Project(HMP)に公的資金が注入され、 基礎情報の収集に始まり、健常者の細菌叢解析、微生物ゲノム解析が進められ、 2型糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、妊娠早産、肥満、IBD等の腸内細菌関連疾患研究 が進みました。2016年には政府主導でNational Microbiome Initiativeが立ち上がり、省庁や官民の垣根を超えて研究資金を拠出する試みが始まり、ビル・ゲイツが運営する ビル&メリンダ・ゲイツ財団も資金を出しています。 マイクロバイオーム製薬における動向は欧米勢が実際の事業化に向けた動きを加速させており、米国でもマイクロバイオームに関連する特許の数は増えています。特にボストンは数多くのバイオテック系のスタートアップ企業を輩出しており、Seres Therapeutics社、Vedanta Biosciences 社をはじめ、Ginkgo Bioworks社、Evelo Biosciences社、Axial Biotherapeutics社などがある。特に米国では再発性クロストリジウムディフィシルの感染症例が多く、マイクロバイオームの治療薬の研究が進んでいます。 (FitzGerald & Spek, 2020) 研究が活発になる一方でリスクも顕在化してきています。2019年には健常者の便を患者に投与する作業を含む治験で死者が出て、米食品医薬品局(FDA)が警告を出しました。従来からも糞便微生物叢移植(FMT)便は一定の効果が確認はされてはいますが、悪性の菌を移植してしまう恐れも指摘されています。COVID-19のパンデミックにより、FMTのリスク管理に対して厳しい目が向けられている状況でもあります。 また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生以来、消費者のプロバイオティクスに対する期待値が高まっており、実際にプロバイオティクスの使用量が、大きく増加したことが分かっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における対策では改めて免疫作用の重要性がフォーカスされており、この市場のドライバー因子ともなると考えられます。 References FitzGerald, M.J., Spek, E.J. (2020). Microbiome therapeutics and patent protection. Nat Biotechnol 38, 806–810 (2020).Retrieved from https://doi.org/10.1038/s41587-020-0579-z
Seres Therapeutics社は新型コロナウイルスで改めて懸念が高まった糞便移植(FMT)による感染リスクに対し、経口投与型の同社のSER-109との違いと、GMP(Good Manufacturing Practice)に基づき、品質管理等が取られていることを強調し、差別化を図りました。Phase 3は治療後12週間で、SER-109群の再発率が16.7%であったのに対し、プラセボ群では47.8%であり、絶対リスクが31.1%減少したことが示され、少なくともFMTと同等の治療効果が出たとされます。SER-109は、2021年に米国で承認される可能性があります。 2020年第三四半期財務状況によると約3000万米ドルの損失が出ています。前年度同期比が約1600万米ドルの損失で、損失規模は拡大しています。一方でネスレ社を通じ、公募増資等をした結果、現金資産を増やし、事業経費も増大させました。 (Seres Therapeutics, 2020) いすれにしても早期の製品実用化が期待されます。 References Seres Therapeutics. (2020). Reported ECOSPOR III Phase 3 study of SER-109 met primary endpoint, demonstrated statistically significant absolute reduction of 30.2% in rate of C. difficile infection recurrence compared to placebo. Retrieved from https://ir.serestherapeutics.com/news-releases/news-release-details/seres-therapeutics-reports-third-quarter-2020-financial-results
沖為工作室はR&D支援センター社主催で「マイクロバイオームの最新市場動向とマーケティング戦略【LIVE配信】」と題したセミナーで2021年1月22日に講演する予定になりましたのでご報告申し上げます。 本セミナーでは、マイクロバイオーム市場に関わるスタートアップ企業の取り組みをメインに取り上げ、さらに市場規模から技術トレンド、シーケンシング、健康食品、農畜水産業等への応用、規制、マーケティングについてまで、幅広く取り扱います。なお講師紹介割引パンフレットでお申し込みいただくと、割引でのご受講が可能になります。パンフレットご希望の際は弊社までご連絡下さい。
沖為工作室合同会社 メールアドレス:support@chong-wei.com 電話:050-4560-2377 開催日時 2021年1月22日(金)13:00~16:00 主催 (株)R&D支援センター ☟詳細は主催者(R&D支援センター)殿ホームページご参照下さい。 https://www.rdsc.co.jp/seminar/210172 (講師紹介割引は弊社・沖為工作室にお問い合わせ下さい) 【プログラム】 1. マイクロバイオーム市場トレンド 1.1 マイクロバイオームとは 1.2 マイクロバイオームと疾患の関係 1) 胃腸疾患系(C. difficile、炎症性腸疾患等) 2) 肝疾患系(非アルコール性脂肪肝等) 3) 代謝障害系(肥満, 糖尿病等) 4) がん疾患(大腸がん、肝臓がん等) 5) 免疫疾患系(1型糖尿病、乾癬、アレルギー等) 6) 脳・神経系疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、自律神経失調症等) 1.3 マイクロバイオームとシーケンシング 1) 16S rRNAシーケンシング 2) ショットガンメタゲノム解析 3) メタボローム解析 4) 統合オミクス解析 1.4 Fecal Microbiota Transplantation (便微生物移植) 2. マイクロバイオームアプリケーション 2.1 治療薬 2.2 診断 2.3 健康食品 2.4 スキンケア 2.5 農畜水産業 2.6 その他 3. サプライチェーン 3.1 マイクロバイオーム産業セグメント 3.2 糞便バンクとマイクロバイオーム 3.3 細菌回収カプセル 3.4 シーケンシング 4. 競争環境分析 4.1 主な市場参入企業の分析 4.2 競合リーダーシップマッピング 5. 市場規模予測 5.1 疾患別、アプリケーション別 5.2 プロバイオティクス、プレバイオティクス 6. マイクロバイオームとマーケティング戦略 6.1 アフターコロナ―でますます高まる健康への関心 6.2 規制と課題 6.2 マーケティング戦略に関する考察 7. まとめ |
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