2008年以降、欧米地域を中心に、マイクロバイオームに関する政府の資金調達が活発化し、プロジェクトの数が大幅に増加しました。 米国ではAmerican Human Microbiome Project(HMP)に公的資金が注入され、 基礎情報の収集に始まり、健常者の細菌叢解析、微生物ゲノム解析が進められ、 2型糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、妊娠早産、肥満、IBD等の腸内細菌関連疾患研究 が進みました。2016年には政府主導でNational Microbiome Initiativeが立ち上がり、省庁や官民の垣根を超えて研究資金を拠出する試みが始まり、ビル・ゲイツが運営する ビル&メリンダ・ゲイツ財団も資金を出しています。 マイクロバイオーム製薬における動向は欧米勢が実際の事業化に向けた動きを加速させており、米国でもマイクロバイオームに関連する特許の数は増えています。特にボストンは数多くのバイオテック系のスタートアップ企業を輩出しており、Seres Therapeutics社、Vedanta Biosciences 社をはじめ、Ginkgo Bioworks社、Evelo Biosciences社、Axial Biotherapeutics社などがある。特に米国では再発性クロストリジウムディフィシルの感染症例が多く、マイクロバイオームの治療薬の研究が進んでいます。 (FitzGerald & Spek, 2020) 研究が活発になる一方でリスクも顕在化してきています。2019年には健常者の便を患者に投与する作業を含む治験で死者が出て、米食品医薬品局(FDA)が警告を出しました。従来からも糞便微生物叢移植(FMT)便は一定の効果が確認はされてはいますが、悪性の菌を移植してしまう恐れも指摘されています。COVID-19のパンデミックにより、FMTのリスク管理に対して厳しい目が向けられている状況でもあります。 また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生以来、消費者のプロバイオティクスに対する期待値が高まっており、実際にプロバイオティクスの使用量が、大きく増加したことが分かっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における対策では改めて免疫作用の重要性がフォーカスされており、この市場のドライバー因子ともなると考えられます。 References FitzGerald, M.J., Spek, E.J. (2020). Microbiome therapeutics and patent protection. Nat Biotechnol 38, 806–810 (2020).Retrieved from https://doi.org/10.1038/s41587-020-0579-z
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10月 2024
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