カーボンニュートラルがトレンドになる中で再生可能エネルギーとバクテリアを応用し、CO合成ガスを有用物質に変換するプロジェクトがグローバル規模で展開されています。微生物による発酵は食品業界などでも古くから用いられているアプローチであり、生産効率(アウトプット)に課題があるものの、近年の微生物学の進展にも後押しされ、微生物を工業用途で用いることが推進されています。 例えばドイツのSiemens EnergyとEvonikは人工光合成に関連したプロジェクトをドイツのマールで実施。電解プロセスによるCO2からCOへの変換を経て、Evonikのバクテリア発酵技術によってCOを含んだ合成ガスを有用物質に変換。また米カーボンリサイクル企業のLanzaTechも製鉄所や製油所などの排ガスからエタノールを製造するガス発酵技術にバクテリアを採用。Dannonとも協業し、カーボンリサイクル市場でシェアを伸ばしています。 従来、有用物質への変換は金属系の触媒が用いられていましたが、複雑な構造の物質(ヘキサノール、ブタノール等)への変換に対しては、微生物が適しており、バイオリアクターが用いられる傾向にあります。人工光合成やカーボンリサイクル市場の成長とともに、COの変換技術としての微生物応用も進んでいます。 (LanzaTech, 2017) 英国ケンブリッジ大学では、CO2から酢酸を合成する菌であるSporomusa ovata(S.ovata)を光触媒シート状に生成する研究を実施。(太陽光の下、)光触媒シートは水をO2に酸化し、電子と水素(H2)をS. ovataに供給することで、CO2から酢酸(CH3COO-)を選択的に合成します(Wang et al., 2022)。 バクテリアを用いた有用物質生成のスケールアップは、エネルギーロスや、微生物制御の難しさ、合成燃料を生成するための還元反応の遅さなどが課題となっているものの、CRISPR技術によるゲノム内の遺伝子改変など、産業用バイオテクノロジーを用いた開発もトレンドになっています。 References
「マイクロバイオームマーケットトレンド-2022版」好評発売中! https://www.chong-wei.com/microbiome_market_trend.html 沖為工作室合同会社は先日、マイクロバイオームマーケットトレンド2022を発売しました。腸内細菌やスキンマイクロバイオーム、プロバイオティクスシーケンシング技術などをメインに取り扱いましたが、近年関心が高まるCO2変換技術におけるバクテリアについても取り上げています。
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1月 2025
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