新社会システム総合研究所社主催で「中国の最新EVトレンドと車載LiBリサイクル・リユースの最新動向」と題したセミナーで講演することが決まりましたのでご報告申し上げます。中国EVバッテリー市場はミリオンマイルバッテリーやコバルトフリー、四元系材料、LFPの再注目等で新たな局面を迎えています。一方で発熱問題や大容量化の課題を乗り越えるために、バッテリー材料で援用される化学技術は複雑化しており、留まることを知りません。ただそうした発展とは別に、変わらず普遍的な問いかけがあり、それはEV市場が将来的に引き起こす廃棄バッテリーの問題です。電気自動車の需要増加に伴い注目を集める車載用リチウムイオン電池のリサイクル・リユース技術ですが、使用済み電池をどのように活用・再生するのか、リサイクルの要素技術から、産業各社の取り組み事例、さらには中国における最新の動向・市場分析についてこのセミナーでは取り扱います。
お申し込み前に弊社にお声がけ頂けると講師割引のご案内ができますので弊社までご連絡下さい。 【セミナー概要(予定)】 日時 2021年4月23日(金) 14:00~17:00 新社会システム総合研究所社ご案内ページ☟ https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=21166 中国EVバッテリー市場はミリオンマイルバッテリーやコバルトフリー、四元系材料、LFPの再注目等で新たな局面を迎えています。一方で発熱問題や大容量化の課題を乗り越えるために、バッテリー材料で援用される化学技術は複雑化しており、留まることを知りません。ただそうした発展とは別に、変わらず普遍的な問いかけがあり、それはEV市場が将来的に引き起こす廃棄バッテリーの問題です。 (Cunningham, 2017) バッテリーはEVコストの多くを占めています。構成している金属は一般的にリチウム、コバルト、ニッケル、銅、アルミ、鉄が含まれています。金属以外も含めると成分は多種多様であり、リサイクルをするには分解していく作業が必要となり、廃棄バッテリーは劣化しているが故に危険も伴います。実際に2021年1月にもリサイクル事業を手掛けるCATL社傘下の湖南邦普循環科技(湖南省長沙市)の工場で爆発が発生しており、安全性への対策が急務となっています。 中国NEV用電池のリサイクル・リユース業界のコンセンサスは、リン酸鉄リチウム電池がカスケード利用に適している一方で、三元系バッテリーがニッケル、コバルト、マンガンなどのレアメタルの含有量が高く、リサイクル価値が高いということです。現状の三元系電池は安全性に一定のリスクがあることもエネルギー貯蔵発電所等での二次利用が躊躇われている要因となっています。 車載バッテリーは、一般論として7〜10年使用すれば蓄電容量が低下し、交換が必要になるとされています。2020年に走っている自動車であれば、2030年前後にバッテリー交換時期にさしかかります。そのときまでにリサイクル&リユース体制の構築が求められます。 References (Picture) Cunningham, W. (2017). For dead EV batteries, reuse comes before recycle. Retrieved from https://www.cnet.com/roadshow/news/for-dead-ev-batteries-reuse-comes-before-recycle/
2021年1月の中国NEV (新エネルギー車)の販売台数は179,000台となり、前年同月比で238.5%増加しました。記録的な販売台数を作った2020年12月ほどの数量はありませんが、1月としては例年にない大きな数量で、CATL社、BYD社、国軒高科社などのバッテリーメーカーは春節の間も生産を続けていた模様です。 (工信部, 2021) またコバルトフリーバッテリー、四元系電池と併せて昨今、リン酸鉄リチウム(LFP)が再注目されています。テスラ社もモデル3でリン酸鉄リチウム(LFP)をを採用しています。三元系と比較しても安全性が高く、コストメリットや耐久性があると考えられています。 またバッテリーのリユース市場ではリン酸鉄リチウム(LFP)を使用したリチウムイオン電池が安全性が高く、電力貯蔵システム用で優先的に使うことがコンセンサスになっています。リユース・リサイクルという観点からも注目されるトレンドです。 なお現在、中国のEVバッテリー市場とリサイクルというテーマで講演のオファーを頂いておりますので、詳細が決まり次第、改めてご報告申し上げます。 References 工信部. (2021). 2021年1月汽车工业经济运行情况
小鵬汽車(XPeng)は、2021年1月に6,015台出荷をし、月間最多台数を三か月連続で更新しました。小鵬汽車(XPeng)社はSUVタイプのG3とセダンタイプのP7を販売していますが、P7がより人気になっており、2021年1月31日現在、P7の累積出荷台数は18,772台になっています。同社は無料充電サービスも展開しており、現在100を超える都市に670か所の充電ステーションを展開しています。 (Xpeng, 2021) 小鵬汽車(XPeng)社は直近では自動運転機能「ナビゲーションガイドパイロット(NGP)」システムを実装していくことを発表し、テスラ社やNIO社の自動運転機能システムに追従しています。 全体として中国NEV市場は現状、息を吹き返していますが、NEVに対するリコールを含めた品質の問題も昨今、クローズアップされるようになっています。工信部では2020年にNEVの検査工程等を対象とした監査を行っており、関連企業の品質パロメーターに一貫性がないことを問題視するとともに、品質に対する意識向上を促す事態になっています。 数か月後に中国車載バッテリー市場概況をまとめた記事が雑誌に掲載されますので、またご報告申し上げます。 References XPeng. (2021). Record Monthly Deliveries
2020年の中国EV販売台数はテスラ社の躍進が目立った一方で、中国新興EVメーカーも特に当該年の後半は奮闘しました。蔚来(NIO)社は2020年に約43,700台の車両を中国市場で販売し、前年比約110%の増加を示しました。同社は新型コロナウイルスの影響で一時は従業員に給料が払えない事態に陥っていると報道されたりもしましたが、結果的に2020年は大きく躍進しています。理想汽車(Li Auto)社もSUV「理想ONE」が2020年12月に月間販売台数記録を更新し、2020年のEV販売台数も約32,000台となりました。小鵬汽車(Xpeng)社も約27,000台を販売し、直近では自動運転機能「ナビゲーションガイドパイロット(NGP)」システムを実装していくことを発表し、テスラ社やNIO社の自動運転機能システムに追従します。 また2020年コロナ禍で米中対立の悪化も懸念されたなかで、前述の理想汽车や小鹏汽车が米国でIPOに成功しました。すでに一足早く米国でIPOを行った蔚来(NIO)社を含めた三社が現在中国EVメーカーで主要な勢力として捉えられています。その他、バイドゥ社、テンセント社も出資する威马 (WM Motor)社や恒大集団系の恒大汽車など、さらなる新勢力の存在感も高まっています。
現在、中国の自動車市場は合資、地場、外資が入り乱れていますが、生き残りをかけての競争が加速しています。勝ち残るための一つのキーとなるのが、現在進行形で発展しているスマートシティーとどれだけシンクロさせることができるかにあります。EVは単なる電池を使った車ではなく、電動化という枠組みで他の電気制御システムと統合してくことで、センサー等を駆使したモビリティー化が推進され、利便性が高まっていくことが考えられます。中国でプレゼンスの高いEVメーカーが自動運転にも力を入れているのは偶然ではありません。 2020年は新型コロナウイルスにより様々な産業が大きな影響を受けました。特に年初の中国NEV市場は2019年7月頃から顕著になった補助金削減による失速傾向にさらに拍車がかかった格好になりました。しかしながら、中国政府は経済再生に向けて各種の支援策を打ち出し、NEV(新エネルギー車)市場においても2020年7月の販売台数は前年同期比でプラス成長となり、長かった失速傾向を断ち切ったことを皮切りに、2020年の新エネルギー車の売上台数は結果として前年度比でプラスの成長となったことが分かっています。 NEV市場をここまでの状態に持ってくるのに多くの支援策が打ち出されました。例えばロックダウン解除された武漢市では地元の自動車メーカーから電気自動車を購入すると1万元(約$1,400)を補助する意向をショートメッセージで市民に伝えたと報じられもしました。未曽有の出来事で失速した経済がこれだけのスピードで回復するのは自助努力だけでは困難であり、こうした支援策があったからと言えます。また同時に中国EV産業はまだ補助金に依存している部分が大きいことが改めて浮き彫りになったとも言えます。 (E车汇, 2019) またNEVに対するリコールを含めた品質の問題も昨今、中国でクローズアップされるようになっています。工信部では2020年にNEVの検査工程等を対象とした監査を行っており、品質のパロメーターに一貫性がないことを問題視するとともに関連企業の意識向上を促しています。こうした観点から捉えると、NEVは品質についても課題が残されており、改善しなければなりません。また車載バッテリーのリサイクルについても、直近の事故としてリサイクル事業を手掛けるCATL社傘下の湖南邦普循環科技(湖南省長沙市)の工場で爆発が発生しています。 多くの課題がまだ存在するNEV市場ですが、逆に言うとこうした環境で質の高い製品、サービスを含めたビジネスモデルを提供できる企業にチャンスがあると言えます。EVシフトと数年前に叫ばれましたが、実際にEVもメインストリームになるにはまだ時間がかかります。製品ライフサイクルで言えばまだ導入期にいるようなもので、この時期は技術開発や広告などに多額の投資をしなければならず、企業にとってはいかに資金調達をしていくかも重要なテーマとなります。 References (イメージ図引用) E车汇. (2019). 全年销量十分之一的新能源车被召回,快看看你的车在列吗?
弊社が執筆した書籍「中国における車載リチウムイオン電池のリユース・リサイクル動向と市場展望」がサイエンス&テクノロジー社から発行されます。中国車載バッテリートレンドからリユース・リサイクルスキーム、トレーサビィティを支えるデジタルプラットフォーム、SDGs等の観点で「今」に切り込んだ内容になっています。 ☟出版社殿ホームページ https://www.science-t.com/ebook/EB035.html 弊社の活動は徐々に認知されるようになってきており、多くの執筆依頼や海外メディアからの問い合わせもきております。弊社では市場調査業界での豊富な経験の他、製造業界で様々なプロジェクトの開発および新製品の上市経験があり、商品化から新たな開発まで、アナリスト、コンサルタントの枠を超えて活動しています。弊社は企業体として利益は追及いたしますが、根本であるミッションからぶれることはいたしません。今後も応援して頂けると幸いです。 SVOLT社は、ドイツのザールラント州にヨーロッパの生産拠点を設立することを最終決定しました。最終拡張フェーズで24GWhの生産能力を備えた最先端工場がザールラント州の2か所に建設されると報じられています。24 GWhは、年間30万から50万台の電気自動車のバッテリーに相当し、最大20億ユーロの総投資が計画されています。SVOLTは、ザールラント州で最大2,000人の雇用を創出したいと考えています。 2つの新しい生産拠点は、主にバッテリーセル、モジュール、および高電圧ストレージシステム(パック)を製造します。 (SVOLT, 2020) 中国では2035年までに全ての自動車を環境対応車にする方針を固めており、英政府も17日、 ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表、EV化への追い風となると考えられます。一方、EV普及に伴って今後の使用済みLiBの大量発生量が懸念されています。中国メディアによると2025年には35万トンまで増えるとの予想もされています。LiBの廃棄処理は安全性も含め環境負荷が大きく、また希少金属を含むため経済的な回収・リユース・リサイクル工程の構築が望まれます。 2020年12月21日にサイエンス&テクノロジー社から発行される弊社執筆書籍「中国における車載リチウムイオン電池のリユース・リサイクル動向と市場展望」では、こうした問題に対する中国政府の政策検討・実施の状況や、EV・バッテリー・電池材料メーカ、通信/エネルギー関連・リサイクル業者等の中国企業の取り組みをまとめています。 書籍のご案内ページ☟ https://www.science-t.com/ebook/EB035.html References SVOLT. (2020, November 17). SVOLT Energy Technology Europe. Retrieved November 18, 2020, from https://svolt-eu.com/en/home-en/
2020年12月21日に沖為工作室合同会社が執筆した書籍「中国における車載リチウムイオン電池のリユース・リサイクル動向と市場展望」がサイエンス&テクノロジー社から発行されます。EVの世界最大市場となった中国。2020年10月下旬にも、従来型のガソリン車等の製造・販売を2035年を目途に停止するというインパクトある政策方針を発表しました。一部アナリストの予想では、2025年にNEVのシェアが全体の25%に達するという意見も出てきています。一方、EVの普及に伴って今後の使用済みLiBの大量発生量が懸念されています。中国メディアによると2025年には35万トンまで増えるとの予想もされています。LiBの廃棄処理は安全性も含め環境負荷が大きく、また希少金属を含むため経済的な回収・リユース・リサイクル工程の構築が望まれます。本書では、こうした問題に対する中国政府の政策検討・実施の状況や、EV・バッテリー・電池材料メーカ、通信/エネルギー関連・リサイクル業者等の中国企業の取り組みをまとめています。 目次
Chapter 1 EV推進政策とコロナ禍を経た中国自動車市況の現状とNEV用バッテリートレンド 1. EV販売台数の現状:コロナ禍の影響 2. 2020年のEV購入補助金削減 3. ガソリン車販売台数の現状 4. EV普及再燃のキーを握るテスラ社の取り組み 4.1 ミリオンマイルバッテリーの開発 4.2 蓄電システムの開発 5. 米国市場でIPOをする中国新興EVメーカー 6. 中国NEVバッテリートレンド 6.1 Svolt社 6.2 CATL社 Chapter 2 車載リチウムイオン電池リサイクルの現状と関連企業動向 1. 車載LiBリサイクルスキーム構築の必要性とその背景 2. リサイクル工程フローの概要 2.1 乾式回収 2.2 湿式回収 2.3 ダイレクトリサイクル 3. バッテリー回収の問題 4. 車載LiBリサイクルスキーム構築や法規制、標準化制度に関わる政策検討 5. 自動車・電池・材料メーカの車載LiBリサイクルへの対応 5.1 テスラ社 5.2 上海汽車社/CATL社 5.3 格林美(GEM)社 5.4 中南大学 Chapter 3 車載リチウムイオン電池リユースのビジネスモデル構築に向けた動き 1. テスラ社のリユースに対する姿勢 2. 国家电网(State Grid)社の取り組み 3. 中国鉄塔社の取り組み Chapter 4 車載リチウムイオン電池のリユース・リサイクル市場展望 1. 今後発生する廃棄車載LiBの時期・数量予測 2. リユース、リサイクル市場の展望 3. 注目されるBaaS 4. キーとなるプラットフォームの精度 5. 競争環境分析(各企業の動向) おわりに ※編集中のため、一部目次が変更となる場合がございます。予めご了承ください。 沖為工作室合同会社は10月14日、サイエンス&テクノロジー社主催「車載用リチウムイオン電池のリサイクル技術動向と産業各社の取り組み事例」セミナーにて、中国における車載バッテリーのリサイクル、リユース最新動向について講演を行いました。 セミナーでは、中国における車載バッテリーのおけるリサイクル、リユースの考え方や事例、ビジネスチャンス、持続可能社会実現に向けた当社からの視点も踏まえ、発表を行いました。 車載バッテリーのリサイクル、リユースは環境改善という側面だけでなく、参加者が決められたルールに沿って行動しないと成立しません。こうした意味で「公平に誰も取り残さない」というSDGsの理念とも密接に関りがあります。(なお当セミナーの発表内容も含めた書籍が12月に発行される予定です。) セミナー当日は著名な方々のご講演とご一緒させて頂き、恐縮かつ光栄であるとともに、コロナ禍に関わらず、ご参加賜った多数のご聴講者様に、改めて深謝申し上げます。
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April 2021
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